Makotsu Garage

本と映像と音楽の記録(ガレージ)

”つかさんのこと” 最終回

”つかさん”の芝居が、1982年の劇団解散前と1989年の再結成後で、

大きく変わってしまったのはなぜだろうか?


という私の長年の謎に、扇田昭彦演劇評論家)が”つかさん”への

追悼文で答えてくれた。

以下、「切ない内出血の喜劇 つかこうへい氏を悼む」

扇田昭彦 2010年7月13日 朝日新聞) より


つかこうへいの新世界   つかこうへいの新世界



直木賞受賞後、彼は小説に専念したが、演劇への思いは断ちがたく、数年後に演劇界に

復帰した。だが、そのころはすでにバブルの時期で、つか演劇と時代の間には明らかに

ズレが生じていた。

こうした状況で彼は思い切った作戦に出た。新作を次々に発表する普通の劇作家とは違い、

彼は「熱海殺人事件」「幕末純情伝」などの往年のヒット作をもとにした改訂版や

新バージョンを上演する方向に転じたのだ。

それとともに、彼自身の演出と俳優たちの演技のスタイルもほぼ固定化した。つまり、

まるで伝統演劇のように、彼は自分の演劇を様式化し、いわば「古典化」したのだ。
私自身は彼の新作劇をもっと見たいと思ったが、結局、彼は90年代以降の時代の

大半を、旧作の改訂・再編方式で乗り切った。」



そして最後にこう結んでいる。

私も全く同感だ。


「ただし、私が最も強い刺激を受けたのは、70年代に、つか氏が小劇場や中劇場で

演出していたころの、こまやかで、生き生きとしたリアリティーに富む舞台だ。

本人は世を去ったが、新しい演出によって、初期つか演劇の魅力を再発見する

試みをしてほしいと思う。」



演出論・演技論篇 (高校生のための実践演劇講座)

演出論・演技論篇 (高校生のための実践演劇講座)


舞台美術・照明・音響効果篇 (高校生のための実践演劇講座)

舞台美術・照明・音響効果篇 (高校生のための実践演劇講座)


これら白水社の書籍は、仕事で少し関わりました。

我々の時代、一生懸命盗もうとした”つかさん”の演出、舞台美術、音響効果、照明

がテキストになっちゃってんだもの・・・・・。

今、芝居やってる高校生は恵まれてるな。



”つか芝居”の真骨頂の一つは音響効果。

蒲田行進曲での小夏モノローグでの

「ザ・ ローズ ( The Rose ) - ベッド・ミドラー ( Bette Midler ) .. 」 が深く心に残る。


合掌。