Makotsu Garage

本と映像と音楽の記録(ガレージ)

プロローグ この命、義に捧ぐ

本書は終戦時の北支那派遣軍司令官根本博中将の物語。

根本は在留邦人4万人、無事日本に帰還させてくれた蒋介石への

恩義を返すため、1949年漁船で台湾へ密航する。


当時、中国では国民党と共産党の「国共内戦」が末期を迎え、

国民党は総崩れで台湾に撤退していた。

根本は国民政府軍の顧問となり金門島での戦い(古寧頭戦役)を指揮し、

上陸してきた中華人民解放軍を撃破した。


金門島の戦いは敗走を続けていた国民政府軍を踏みとどまらせ、

台湾を防衛させることに成功した。

中国本土から2kmしか離れていない金門島

現在も、台湾政府の支配下にある。



この物語のプロローグには、もう一人重要人物がいた。

陸軍大将であり台湾総督も務めた明石元二郎である。

明石は日露戦争中、中立国スウェーデンから日本陸軍最大の謀略戦を展開した。

ヨーロッパ全土のロシア革命組織に多額の資金援助をおこない

1905年の第一次ロシア革命を煽り立てた。

結果、ロシア国内には厭戦気分が広がり日露戦争を有利に導いた。

「明石の活躍は陸軍10個師団に相当する」と賞された。


明石はその後、台湾総督となり台湾のインフラ・教育の整備に尽力し

在任中に55歳で死亡した。死後は本人の遺言により台北市内に埋葬された。




1949年、台湾の危機にあたり根本博元中将をはじめとする旧軍人を

国民政府軍事顧問とすべく、漁船で密出国させることに尽力したのは

明石元二郎の長男、明石元長だった。

根本を密出国させてから4日後に元長は急死する。

彼も父の遺骸が眠る台湾を救うべく命を賭けたのだった。


なんたる運命の巡りあわせか・・・

物語のプロローグで