福岡と工藤にはこんなエピソードがあった。
95年、工藤は常勝西武から福岡ダイエーホークスに移籍する。
99年、ダイエーは日本シリーズで中日を破り初の日本一になった。
王監督を胴上げし、工藤自身もシリーズMVPとなった。
シーズンオフ、ダイエー球団側は、日本一の功労者工藤に対し、
あまりに誠意を欠いた契約交渉を行った。
結果、工藤はFA宣言し巨人へ移籍した。
それを知ったホークスファンは「ホークスに残って」と
17万3千人が署名活動を行い、嘆願書を工藤に渡した。
その後、署名したファンの元に
工藤自身から住所と宛名が直筆のハガキが届いた。
ハガキにはこう書いてあった。
「マウンドで投げる47の後にいつもあなたの声援があったこと、 この5年間に感謝を込めてありがとうございます」
のちに工藤は真相と心境を告白した。
当時、ダイエーファンに直接、何の話もできなかった。
署名に参加したファン全員に手紙を送り、感謝の気持ちを表した。
住所と宛名はすべて手書き。全員に手紙を送るのには約7年間かかった。
巨人ファンのことを想い、手紙のことは公言しなかった。
16年ぶりに古巣に指揮官として戻った工藤公康は、
ようやく本当の意味での恩返しができるのだ。