Makotsu Garage

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通俗道徳のわな

(前日のつづき)

本書では、

”明治“は「不安と競争の時代」だったという。


従来の社会秩序、価値観、経済が急激に変わり、

混乱と先行きの見えない不安が渦巻いた。


そんな中で人々の心の拠り所となったのが、

通俗道徳といわれる考えだった。

(通俗道徳の例)
・勤勉に働けば豊かになる
・倹約して貯蓄しておけば、いざという時困らない
・親孝行すれば家族円満である

「努力すれば必ず成功する」
「成功するには努力せねばならない」


人々は自らを律することで不安に抗おうとした。


通俗道徳が生まれた背景は、江戸後半以降に

市場経済の 進展で人々の生活が不安定になった

ことにあった。



しかし「努力すれば必ず成功する」

という保証はどこにもない。

むしろ成功より失敗する方が多い。


通俗道徳の思想からすると

「成功したのは正しく努力した人、

失敗(困難)は努力しなかったダメな人」

とすべて自分の責任となる。

これが「通俗道徳のわな」。


人々は「どんな手段を使っても、他人を蹴落として

でも成功せねばならない」となっていった。

「立身出世」と「都市下民層」・・・

明治は、過酷な競争社会であった。


日本の下層社会 (岩波文庫 青 109-1)

日本の下層社会 (岩波文庫 青 109-1)


貧困問題、医療費の増加を

すべて自己責任に押し付ける閣僚・・・

おいおい、「通俗道徳のわな」の呪縛は、

現代でも解けていないぞ。