Makotsu Garage

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「尊王攘夷は呪いの言葉」(大河ドラマ「晴天を衝け」)

 全く期待していなかったのに、始まったら面白くてくぎ付け・・

これから始まる「東京オリンピック2020」のことではなくて、

大河ドラマ晴天を衝け」のことだ。

 

今週も、平岡円四郎暗殺からの一橋慶喜の覚醒、そして禁門の変

下関戦争・・と見どころ満載だった。そんな中、一ツ橋慶喜のセリフが

深く印象に残った。

 「尊王攘夷か。まこと、呪いの言葉になりはてた

 

慶喜の父「烈公徳川斉昭」(竹中直人)の信念でもある「尊王攘夷」の

エネルギーは、徳川300年の泰平を揺り動かした。しかし「攘夷」という

方法論には現実性のかけらもなかった。

やがて長州は、禁門の変と下関戦争で、薩摩は薩英戦争での痛みを伴い

ながら現実路線へと舵を切る。最後に残ったのは水戸藩の「天狗党」。

 

天狗党」は藤田小四郎武田耕雲斎に率いられ、筑波山に挙兵。

烈公尊王攘夷の心を朝廷に見せ一橋慶喜に直訴する”目的で京都に向けて

進軍を開始した。これを知った慶喜

私の手で天狗党を討伐する」と宣言する。この時発せられたのが

冒頭のセリフ「尊王攘夷は呪いの言葉」だった。

 

亡き父の信念を体現する、実家「水戸藩」の家臣を自らの手で討伐する・・

慶喜にとってはまさに「呪いに」だったに違いない。

 

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今回の放送では、尊王攘夷に突っ走る水戸藩天狗党」と 

攘夷の無謀さを知り、長州藩を説得するために留学先のロンドンから

帰国した伊藤俊輔(博文)井上聞多(馨)が対比されて描かれている。

(※この二人は明治の元勲として活躍)

この対比も象徴的だった。尊王攘夷の崩壊が渋沢栄一の形成に大きな影響を

及ぼすということなのだろう。

 

今までに天狗党をここまで詳細に描いたドラマはなかった。

この後、天狗党は各地で幕府軍と戦いながら京を目指し、福井県敦賀

全825名が投稿する。投降後の悲劇は語るにも悍ましい・・・

大河ドラマではこの悲劇をどこまで伝えるのだろうか。