8月は、太平洋戦争関連の番組が多くなる。
戦争記憶の風化が危惧される中、民放は一部を除き、
特集番組は、ほとんど放送されなかった。
その分、NHKが孤軍奮闘、良質な番組を提供してくれた。
この手の番組が毎年ほとんど見ているのだが、
毎年、NHKは新たな発見、切り口を繰り出してくるので
まだまだ知らないことばかりだ・・・と痛感する。
8月11日に放送された「特集ドラマ アイドル」もそうだった。
「ムーランルージュ新宿座」を舞台に「戦時下のエンターテインメント」を
描いた青春ドラマ。実在したムーランのトップアイドル「明日待子」が主人公。
ムーランルージュと言えば、戦前に軽演劇やレビューで学生や知識人の
人気を集め。錚々たる喜劇人や作家を輩出した伝説の劇場。
左卜全、有島一郎、由利徹、増田喜頓、森繁久彌、春日八郎、水谷八重子、
私が幼少の頃(幼稚園の頃)に見たテレビに出ていた喜劇人の多くが
ムーランルージュに関わっていた。
と、ここまでは私も知っていたのだが、
戦時下のムーランに「会いに行けるアイドル」達がいて、
後に学徒動員で戦地に散っていった学生たちの、文字通りアイドル
だったことは、全く知らなかった。
AKBに代表される「会いに行けるアイドル」が人気を博すのは、
78年前も現代も全く変わっていないことに驚いた。
ドラマは、ムーランの絶対的エース「明日待子」の青春期の形をとる。
会いに行けるアイドル達と劇場に来る出征学徒、戦地慰問での最前線の
兵士たち・・・明日待子は自信の存在理由と役割について苦悩する。
苦悩しつつも懸命に唄って踊って、ファンの為に生き続けた・・・
それが「アイドール(idol)」だから。
戦時下にAKBのルーツとなるアイドルが、活躍していたことに
驚くとともに、明日待子さんが2019年まで存命だったことにも驚いた。
ドラマ中の明日待子さんは非常に魅力的なアイドールに描かれていた。
芸能史、演芸史を得意とする私が、今まで一度もその名前を耳にしたことが
なかった。なんでだろう? 不思議だな。