Makotsu Garage

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市川崑と『犬神家の一族』 春日太一

読了。

コメディから文芸、戦争、時代劇、SFまで監督作品は多岐にわたる。

しかし市川崑監督は

「ジャンルに一貫性がなく、依頼された企画はなんでも受ける」

という監督ではない。と著者は言う。

「彼は来た依頼を受ける一方、その受けた依頼を自分の色に

 染めて観客に提示してきた」


市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)

市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)


なかでも1976年の「犬神家の一族」は、

市川崑の美学と技術の双方が凝縮された、

集大成的な作品である。その作品で市川崑が何をしてきたのかを

本書は徹底的に検証する。


犬神家の一族」それに続く「悪魔の手毬歌」がネタバレ後に、

何度見ても面白いのは、作品が犯人探しの面白さだけではなく

魅力的なディテールに満ちているからなのだ・・・



犬神家の一族」は大当たりし市川崑の名声は復活した。

当然に続編を求められ、2作目の「悪魔の手毬歌」を

完璧な作品にしてしまう。

しかしこの2作で使える手を打ち尽くしてしまった。

続く「獄門島」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家

ではもはや・・・

ましてやリメイク版の「八つ墓村」「犬神家の一族」は論外


決して市川崑賛美のみの内容ではないが、

無性に「犬神家の一族」と「悪魔の手毬歌」が観たくなる。

ちなみに八重洲ブックセンターでのトークショ―は

本書の10倍面白かった。