Makotsu Garage

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「樺太ーカラフト」を知る(別冊正論)

樺太を見たことがある。
何回目かの宗谷岬に行ったとき。
晴天のかなたに大きな島影が見えた。
以外にデカい(近い)。あれが樺太か…


当時は司馬遼太郎ロシアについて―北方の原形 (文春文庫)
読んだばかりだったので、あれが「ロシア」
(当時はソ連だったが)かと感慨深かった。
また宗谷海峡を前に国境を考えさせられた。


本書の内容は大まかに
 ・樺太の領土的歴史
 ・戦前の樺太での生活
 ・ソ連軍の侵攻とシベリア抑留
 ・現在の領土的意味  で構成される。


きちんと理解しておかなければならないのは、
1945年まで日本の施政下にあった南樺太
朝鮮や台湾のようだ植民地(外地)ではなく
日本国内(内地)であったと。
行政官庁の樺太庁は、内務省の管轄下にあり
国内法が適用されていた。
樺太都道府県と同等なのであった。



領土史的にも、江戸時代に日本が領有宣言していた土地に
ロシアが侵入し、日露和親条約で両国雑居の地とされ
千島樺太交換条約で領有を放棄させられた。
(これはロシアが清国領沿海州を奪取した方法を同じ)
日露戦争後のポーツマス条約で南樺太を割譲した時は
樺太回復(返還)」と言われたそうだ。


それが終戦間際のソ連参戦で占領され、サンフランシスコ
講和条約で日本本土たる樺太まで放棄させられた。
ただし同条約では樺太がどこの国に組み込まれるかは
規定しておらず、ソ連は本条約に署名を拒否している。
国際法上は帰属未定地だが、ロシアの不法占拠が続く。
 

樺太」という地名は死語になりつつある・・・
私も知らないことばかりだった。
領土的歴史的な問題もそうだか、戦争末期の悲劇
真岡郵便電信局事件 が有名)も
決して忘れてはならない
その意味で本書は意義があると思う。