本書の冒頭にあった、
秋田魁新報社の記者と米軍基地の取材を長年続ける記者
の会話に、痛烈な印象と嫌悪を覚えた。
「政府が地方に防衛施設を置く場合、
どんな経緯をたどっていくのが一般的か?」
①まず、報道を通じて観測気球を揚げる。
②次に、住民の反応などを見ながら、候補地になったことを
自治体に連絡する。
③そして、「適地」という判断を明らかにした後、安全対策などを
示した上で地元首長から受け入れの言質を引き出す。
「イージス・アショアの配備もそうなりますか?」
「いつものパターンで来るでしょうね。」
秋田新屋演習場へのイージス・アショア配備計画は、
このいつものパターンで来た。それも地元への配慮の欠片もない
杜撰かつ強引な手法で・・・
これに対し秋田の地元紙「秋田魁新報社」は、配備計画が浮上した
2017年晩秋より徹底的に追跡し、防衛省の候補地データの杜撰さを
天下に暴き、この配備計画を全国的な問題として提起した。
その後も「新屋駐屯地ありき」の選定経緯の矛盾を追求し続けた。
2020年6月。ついに河野防衛大臣は
「イージス・アショアの配備計画の停止」を発表した。
ここに至る 道筋において、秋田魁新報社の報道の力は
計り知れない。本書はその取材裏を描くドキュメント。
その報道姿勢には新聞社本来の姿を見る思いがし、清々しかった。
とともに政府官僚のやり方には、強い嫌悪を覚える。