文春文庫の新刊で吉村昭・・・なぜ?
そのこころは「新装版 文字が大きくなりました」。
読んでいる作品だけど、つい新装版を購入して読みはじめる。
その力強く緻密な文体に、引き込まれるように読了した。
- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/01/04
- メディア: 文庫
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・戦争末期、北海道の漁村に多くの日本兵の水死体が打ち上げられた。
死体を収容していた漁師たちは奇妙なことに気づいた。
死体の半数近くは腕がないのだ・・・
戦後20年経っても漁師たちはその真相を語ろうとしなかった。
「憲兵に口止めされているから」という理由で。 (作品「海の柩」)
・8月15日の終戦後も樺太ではソ連軍と戦闘が続き、避難民の中で
真岡郵便電信局事件をはじめとする多くの悲劇が生まれた。
女性看護師が集団自決を図った。奇跡的に生き残った看護師たちは
戦後もその事実を決して語ろうとはしなかった。 (作品「手首の記憶」)
・昭和19年6月、急速潜航訓練中に不幸な事故によって沈没し、
102名を乗せたまま鉄製の柩と化した「伊号第三十三潜水艦」。
戦後9年の歳月を経て引揚げられた艦内の一室からは、
生けるが如くの13名の遺体が発見された。
(作品「総員起シ」)
上記を含め5つの短編(戦史小説)は、日本領土内で人々が接した戦争を
忠実に描いたものでる。その重さにも胸が締め付けられる・・・。