Makotsu Garage

本と映像と音楽の記録(ガレージ)

写真のなかの江戸(ユウブックス)

最近読んだ本の中では格別の面白さだった。

2018年1月刊行で出版社がユウブックス・・

全くノーマークだった。

 

写真のなかの江戸  絵図と古地図で読み解く20の都市風景

写真のなかの江戸 絵図と古地図で読み解く20の都市風景

  • 作者:金行 信輔
  • 出版社/メーカー: ユウブックス
  • 発売日: 2018/01/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

幕末に撮影された江戸の風景写真20枚について、

その撮影地点を、古地図と現代地図上にプロットし

現代の風景と比較する。そして写真に写る、

大名・旗本屋敷、江戸城、町家・商家について

文献、古文書、古地図から撮影時期を特定し

当時の状況を詳細に解説する。

これがブラタモリ的に面白い。

 

例えば、この写真は、

愛宕山から撮影された江戸パノラマ写真の一枚

 

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撮影者フェリーチェ・ベアドの来日時期と新聞への掲載時期、

太陽の高度・方位角から撮影時期は1863年文久3年)8月頃

仮定。写っている屋敷は、順番に

 浜御殿 徳川将軍家(現:浜離宮恩賜公園

 ・松山藩松平家上屋敷(15万石 愛媛県

 ・長岡藩牧野家中屋敷(7万4千石 新潟県

 ・小泉藩片桐家上屋敷(1万1千石 奈良県

 

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本書が注目するのは、小泉藩片桐藩上屋敷

よく見ると屋敷の中央が空き地となり、周辺の家屋を解体

しているように見える。これは前年(文久2年)に発令された

参勤交代緩和令※による大名家族・家臣の国元への帰国で

不用となった建物(奥御殿)の解体と推測できる。

 ※黒船来航に対する海防拡充のために、参勤交代と

  妻子江戸居住の財政負担軽減を目的に、参勤交代緩和令

  が発令された(参勤交代は3年に一度、妻子の帰国は自由)

 

このような感じで、一枚の江戸の風景写真から

多くの歴史事象が浮かび上がる。これは面白い・・

 

そして白黒写真の中に

江戸の街の美しさを想像する。

いい本に巡り合った。

 

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著者のトークイベントがあるらしい。これは行きたい。

『写真のなかの江戸』トークイベント

 3月1日[木]19:30-21:30 参加料1,500円

 6次元 (ROKUJIGEN)荻窪