午後、安倍首相辞任のニュース速報が流れた。
やはり突然の感は否めない・・療養、入院はあるあと
思っていたが、まさか辞任とは・・・。
テレビをはじめマスコミは、一気に色めき立った。
安倍政権の総括、詳細な病状、海外の反応、後任争い、
次期政権に引き継ぐべき課題・・等々、ネタには事欠かない。
病気での辞任は、お気の毒としか言いようがない。
一刻も早く療養、治療をして頂き、病気が快復することを願う。
これについては、誰しも同じ気持ちであろう。
しかし、これまで安倍政権下で継続中の課題(森友、加計、
東京五輪 他)が、安倍首相の辞任でチャラになったわけではない。
政権与党は今まで以上に、国民の不信感を拭うべく真摯に
向き立っていく必要がある。
以上ような正論に対して、病気を揶揄している。病気をおして
頑張ってきた首相に対して失礼だ。記者会見で失礼な質問をするな。
という論調がかなりあるようだ。それとこれとは別の問題なのだが・・・。
やはり令和になっても相変わらず日本は、
「エビデンス=データ」より「空気」に流されている。
猪瀬直樹の「昭和16年夏の敗戦」は、1986年に文春文庫で発刊された時に
読んだ記憶がある。それが今年の6月に中公文庫より新版として発売された。
今、書店で平積みになっている本書のカバーがなかなか目を引いている。
カバーの書名以外の部分は、いわゆる帯のコピーを縦に並べ、文字を強調
している。その中で一番大きなコピーが衆目を集める。
「データより空気」が日本最大の悲劇を生んだ。
中央公論さんは、上手いコピーを付けたものだ。
現在の状況を見事に重ね合わせた、人目を引くコピーだ。
この言葉を理解するには、本書の説明が必要だ。
昭和16年8月、内閣府直属の機関である「総力戦研究所」に各省庁の若手エリート官僚が
集められ、「模擬内閣による総力戦シミュレーション(机上演習)」が行われた。
そしてあらゆる予断を排して、客観的な数字に基づいてシミュレーションを行った結果は、
「日本の必敗」だった。しかし、この結果は無視され無謀な戦争へと突入した。
本書はその意思決定のプロセスを克明に描き、日本的組織の構造的欠陥を衝く。
当時(昭和16年)の日本的組織の象徴ともいえるのが「空気」だった。
さて昨今のコロナ対策を顧みる・・・
「緊急事態宣言の発令、解除の具体的基準」
「Go Toトラベルキャンペーンの対象地域加入、除外の基準」
「感染ピークを越えた?その判断理由は」
すべてにおいて「データ」のエビデンスが見えない・・
”景気回復へ前のめり”という「空気」だけで動いているように見えてしまう。
「データより空気」が日本最大の悲劇を生んだ。
が令和の世で繰り返されることがあってはならない。