太平洋戦争80年・特集ドラマ
「倫敦(ロンドン)ノ山本五十六」
12/30(木)NHK総合 22:00~23:13
新たな山本五十六の視点と緊迫した展開・・・
なかなか見応えのあるドラマだった。
太平洋戦争の敗戦へ向かう海軍の分岐点は
「第二次ロンドン海軍軍縮会議の予備交渉(1934)」※だったとする。
その時の海軍側首席代表が山本五十六だった。
ドラマは、この予備交渉にスポットをあてて進行し、全編にわたり
山本は省部(海軍省、軍令部)の意向を尊しつつ、条約継続に向けて
独自の交渉を粘り強くおこなう。ようやく見て言え来た協調案を
本国に図るが拒否されてしまい、予備交渉は決裂する。
この結果、海軍軍縮条約は破棄され、無制限の建艦競争時代に入り、
敗戦まで突き進んでしまう。その間の犠牲者は270万~300万人・・
この予備交渉が、歴史の大きな転換点であったのは間違いない。
久々の香取慎吾は好演だった。
凛とした軍人の佇まいと、板挟みの苦悩を見事に演じていた。
条約撤廃を主張する海軍省、軍令部幹部には、見事に悪党顔を集めたものだ。
特に島田久作演じる軍令部総長「伏見宮博恭王」のラスボス感。写真で見る
と顔もそっくりだった。この宮様は実戦・実務経験が豊富で単なる
お飾りの宮様ではなかった。艦隊派(条約反対派)の中心人物として
9年間にわたり海軍軍令部総長の職にあり、条約撤廃の実際のラスボスであった。
山本五十六はハーバード大学への留学、ワシントンの日本大使館付武官の
経験がありアメリカの国力を肌身で感じていながらも、この予備交渉から
帰国後は、海軍航空本部長、海軍次官、連合艦隊司令長官と海軍の中枢を
歩み対米戦争を指揮していった。
倫敦(ロンドン)からの帰国後、五十六はなぜ転身してしまったのか・・・
ドラマを見てその謎が芽生え深まった。
1943年4月。山本は「い号作戦」視察のためラバウルに赴き。
さらに最前線のバラレ島基地に向かう途中、撃墜され戦死した。享年59歳。
まるで死に場所を求めているかのような前線視察に思えてしまう。
角川新書「太平洋の巨鷲 山本五十六」の重版のオビに
こう書かれている。「必負の戦争を強いられた男、その真相」