Makotsu Garage

本と映像と音楽の記録(ガレージ)

能登半島のCVSから見える出版配送

地震で被害を受けた能登半島は、時間が経つにつれて

孤立集落の存在が明らかになり被害が増大している。

そんな中こんな記事に目が留まった。

ファミマの親会社・伊藤忠の会長が1月5日に

いまファミマの社員100人が物資を担いで行っている」と発言。

 

さすが現代のライフライン「コンビニ」! さすがの動員力だ。

他のコンビニも・・・・ではないらしい。

それは、コンビニ三大チェーンの能登半島での店舗分布をみると

一目瞭然だった。能登半島の先端まで店舗があるのは、

ファミリーマートだけだった。

 

 

セブンイレブン店舗分布

 

ローソン店舗分布

 

ファミリーマート店舗分布

 

コンビニチェーンで有名なのが「ドミナント戦略

「特定の市場(エリア)に戦力を集中(出店)しシェアアップを図る」

ドミナント戦略のメリットは大きい

 ・コスト削減効果「効率的なロジスティック」「仕入スケールメリット

        「マーケティングデータの共有化」

 新規参入阻止効

 ・広告コスト削減効果

 ・販売促進効果(エリア内での知名度の向上)

店舗分布図を見るとセブンイレブン、ローソンは忠実に

ドミナント戦略に基づいた出店なっている。一方でファミリーマート

能登半島全体に広範囲に店舗が分布している。

見る人が見れば、この理由は過ぐに分かる。

 

ファミリーマートが合併したユニー系の旧コンビニ「サークルK」

店舗を引き継いだからであろう。ユニーは中京圏は本拠地のSMで

北陸、新潟地方にも展開している。そのコンビニであったサークルK

中京・北陸での店舗数が多かった。

サークルKが、地場のコンビニとして大手チェーンと戦うには、

大手チェーンがドミナントで出店できないエリアを確保するという

戦略だったのであろう。

 

togetter.com

 

この分布を見て思うのは、今ホットなテーマであるコンビニへの出版配送のことだ。

日販が不採算との理由で2025年にファミリーマートローソンとの取引(配送)を

返上を発表し、私の前職トーハンがそれを引き継ぐ方向で検討している。

 

現在、コンビニ1店舗あたりの出版物配送量は、

 22.2冊/日。1.9個/日 そのうち1個が返品。(日販調べ) 

 

出版配送は、書店と全てのコンビニの荷物を一緒に配送(共同配送)している。

上記の分布図に置き換えると、能登半島中部の七尾エリアまでは、

書店と3つのコンビニチェーンの出版物をまとめて配送できるが、そこから先は

ファミリーマートとわずかな書店の荷物を配送する為に、トラックを

走らせることになる。

 

なかなか土地勘がないが、首都圏に置き換えると 七尾⇒輪島⇒珠洲の距離は、

東京⇒八王子⇒川越のサイズに近くかなり長距離だ。その距離を1店舗あたり

1日1.9個(うち返品1個)という配送の為に、発売日に間に合わせるように

トラックを走らせなくてはならない。それも安価な配送料金で。

 

考えれば考えるほど、出版配送の脆弱性と危険性をヒシヒシと感じる。

 


前職のトーハンがコンビニ配送の引継ぎを表明した。

「出版配送を守る」「出版文化を守る」というキレイごとだけで

解決できるような簡単な話では決してない。ましてや本業の取次業は

赤字構造から脱却できていない。

 

とはいっても、私が三十数年務めた会社だ。やってくれるはずだ。

今は応援しかできないが。きっとやってくれると信じている。